ローリングストックとは、普段食べている食品を少し多めに備え、食べた分を買い足していく備蓄方法です。
「何を買えばいい?」「何日分必要?」「どうやって始めるの?」――そんな疑問を持つ初心者の方に向けて、ローリングストックの基本から実践方法までをまとめました。
この記事では、農林水産省などの公的な情報をもとに、必要な備蓄量、食品の選び方、収納方法、無理なく始める手順を順番に解説します。難しい管理や特別な準備は必要ありません。いつもの買い物や食事を活かして、今日からできる備えを一緒に考えていきましょう。
まず押さえたい、ローリングストックの3つの基本
ローリングストックは、特別な非常食を大量に買い込まなくても、普段の食品を活用して災害に備えられる方法です。初心者の方は、まず次の3つを押さえておきましょう。
- 何を備える? 普段から食べている、常温で保存しやすい食品を中心に選びます。
- どのくらい備える? 食品は最低3日分、できれば1週間分×人数分が目安です。水は飲料用・調理用として1人1日約3Lを備えます。
- どうやって始める? 家にある食品を確認し、足りないものを少しずつ買い足します。食べた分を補充して、一定量を保ちましょう。
この3つを基本に、必要な食品や量を自分の家庭に合わせて考えることが大切です。ここから、それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

なぜローリングストックが必要なの?
大きな災害が起こると、スーパーやコンビニに商品が届かなくなったり、停電や断水によって普段どおりの食事ができなくなったりする可能性があります。農林水産省では、過去の災害の経験から、最低3日分、できれば1週間分程度の食品を家庭で備蓄することを推奨しています。
しかし、非常食だけで何日分もそろえようとすると、費用や収納スペースが気になる方も多いでしょう。そこで役立つのがローリングストックです。普段から食べる食品を備蓄に活用することで、次のようなメリットがあります。
- いつもの買い物の延長で始められる
- 食べ慣れた食品を災害時にも用意できる
- 日常的に消費するため、賞味期限切れを防ぎやすい
- 一度に大量購入せず、少しずつ備えを増やせる
- 非常食だけに頼らず、食品の選択肢を広げられる
また、災害時は慣れない環境で過ごすことになります。そんなとき、食べ慣れた味や好きな食品があることは、食事の時間を少しでも安心できるものにしてくれます。
ローリングストックは何日分必要? 人数別の備蓄量
農林水産省では、食品の家庭備蓄について、最低3日分、できれば1週間分×人数分を目安としています。さらに、水は飲料用と調理用を合わせて、1人1日おおよそ3Lが必要とされています。まずは人数に応じた目安を確認してみましょう。
| 人数 | 3日分の水 | 7日分の水 |
|---|---|---|
| 1人 | 9L | 21L |
| 2人 | 18L | 42L |
| 3人 | 27L | 63L |
| 4人 | 36L | 84L |
食品については、1日3食とすると、1人3日分で9食、7日分で21食が目安になります。ただし、これは食事の回数を示したもので、パックご飯や缶詰をその数だけそろえれば十分という意味ではありません。主食だけでなく、たんぱく質をとれるおかずや野菜を補う食品なども組み合わせ、必要なエネルギーと栄養を確保することが大切です。
最初から1週間分を完璧にそろえる必要はありません。まずは家にある食品を確認し、不足しているものを買い足しながら、3日分、そして1週間分へと備えを整えていきましょう。

ローリングストックには何を買う? おすすめ食品の選び方
ローリングストックに特別な食品は必要ありません。選ぶときの基本は、「普段から食べている」「保存しやすい」「災害時にも食べられる」の3つです。
ただし、普段は便利な食品でも、調理に大量の水や電気が必要なものは、ライフラインが止まったときに使いにくい場合があります。食品の種類だけでなく、食べるために何が必要かも確認しておきましょう。
① 主食|エネルギー源になる食品
- パックご飯
- アルファ米
- カップ麺
- 乾麺
- シリアル
- クラッカー
- パンの缶詰
ご飯や麺類は備蓄しやすい食品ですが、加熱や水が必要なものもあります。電気やガスが使えない状況も想定し、そのまま食べられるものや、少ない手間で用意できる食品も組み合わせておくと安心です。
② 主菜|たんぱく質をとれる食品
- サバやツナなどの魚の缶詰
- 焼き鳥などの肉の缶詰
- 大豆や豆類の缶詰
- レトルトカレー
- レトルトのおかず
災害時の食事は、ご飯やパンなどの炭水化物に偏りがちです。農林水産省でも、たんぱく質を確保するために、肉や魚などの缶詰を備えることを紹介しています。普段から好きなおかずを選び、温めずに食べられるものがあるかも確認しておきましょう。
③ 副菜・汁物|不足しがちな栄養を補う食品
- 野菜ジュース
- 野菜の缶詰
- 乾燥わかめ
- 切り干し大根
- インスタントみそ汁
- 即席スープ
- 日持ちする野菜
災害時は野菜が不足しやすくなります。主食や主菜だけでなく、副菜になる食品も意識して備えておきましょう。ただし、乾物やスープ類には調理用の水やお湯が必要なものもあります。使える水や熱源を考えて組み合わせることがポイントです。
④ お菓子・好きな食品|いつもの楽しみも備えに
- ビスケット
- チョコレート
- ようかん
- ナッツ
- 好きなお菓子
ローリングストックは、栄養をとるための食品だけに限りません。農林水産省でも、災害時にほっとできるよう、食べ慣れたお菓子などの嗜好品を備えることを紹介しています。自分や家族が好きなものを少し多めに持っておくことも、暮らしになじむ備えのひとつです。

今日からできる! ローリングストックの始め方4ステップ
必要な量や食品の種類がわかったら、実際に始めてみましょう。難しい管理表を作ったり、一度に大量の食品を買ったりする必要はありません。
① 家にある食品を確認する
まずは、キッチンや食品棚にある食品を見てみましょう。普段から使っている缶詰やレトルト食品、乾麺なども、保存状態や賞味期限によっては備蓄として活用できます。家族が何を食べるか、どのくらい残っているかを確認することから始めましょう。
② 備えておきたい量を決める
人数や食生活を考えて、食品ごとの目安を決めます。例えば、普段からよく食べる缶詰なら「常に3缶は置いておく」など、食品ごとに基準を決めておくと、買い足す量を判断しやすくなります。この基準を少しずつ積み上げ、家庭全体で必要な備蓄量を確保していきましょう。
③ 足りない食品を買い足す
次の買い物で、いつもの食品を少し多めに買ってみましょう。「今日はパックご飯を2つ追加しよう」「今週は缶詰を買い足そう」――そんな小さな買い物から始めても大丈夫です。
④ 食べた分を補充する
備蓄した食品は、賞味期限の近いものから普段の食事で使い、食べた分を買い足します。大切なのは、食品を消費するだけで終わらせず、一定量のストックを保つことです。うっかり賞味期限が切れてしまった場合の判断については、非常食って賞味期限が切れても食べられる?で紹介しています。

見落としがち! 災害時に本当に使える備蓄になっている?
ローリングストックを始めるときに、ぜひ一緒に確認しておきたいのが、「その食品を、災害時にも食べられるか」ということです。例えば、パックご飯や乾麺をたくさん備えていても、停電や断水で調理できなければ困ってしまいます。次のポイントをチェックしてみましょう。
- 電気やガスがなくても食べられる食品がある
- 加熱が必要な食品のために、カセットコンロなどを備えている
- 飲料用・調理用の水を確保している
- 缶詰は缶切りが必要かどうか確認している
- 家族が実際に食べられる味や食品を選んでいる
- 食物アレルギーや年齢などに応じた食品を備えている
特に、乳幼児、高齢者、食物アレルギーのある方、食事に配慮が必要な方がいる家庭では、一般的な備蓄食品だけでは対応できないことがあります。普段の食事を基準に、必要な食品を別途確保しておくことが大切です。また、カセットコンロを使う場合は、使用方法や換気などの安全上の注意も確認しておきましょう。
収納はどうする? 食品を使いやすく備える基本
ローリングストックでは、食品をどこに置くかも大切です。普段使う食品を収納の奥にしまい込んでしまうと、存在を忘れたり、賞味期限を過ぎてしまったりすることがあります。まずは、日常的に使いやすい収納を意識しましょう。
- 普段使う食品は取り出しやすい場所へ
- 賞味期限が近いものを手前に置く
- 新しく買ったものは奥へ置く
- 重い食品や水は安全に保管できる場所へ
- 高温多湿や直射日光を避け、表示された保存方法を守る
ただし、食品をすべてキッチンに置く必要はありません。収納スペースに余裕がない場合は、日常的に使う分と、少し長めに保管する分を分けて考える方法もあります。無理に収納用品を増やすのではなく、今の暮らしに合った置き場所を考えることがポイントです。
置き場所に悩んだときは、「防災備蓄、どこに置く?」お悩み解決アイデア3選や、床上浸水を経験した筆者による備蓄の「分散収納」の記事も参考にしてみてください。
ローリングストックと長期保存の非常食、両方必要?
ローリングストックを始めたら、長期保存の非常食は必要ないのでしょうか。実は、どちらか一方に絞る必要はありません。普段食べる食品と、主に災害時に使う長期保存食品には、それぞれ異なる役割があります。
| 比較項目 | ローリングストック | 長期保存の非常食 |
|---|---|---|
| 食品 | 普段から食べる食品を活用 | 災害時の使用を主な目的とする食品 |
| 管理 | 日常的に消費して補充する | 定期的に期限を確認・交換する |
| メリット | 食べ慣れた食品を備えやすい | 商品によっては数年間保存できる |
| 注意点 | 定期的な買い足しが必要 | 試食や使い方の確認が必要 |
例えば、普段食べているレトルト食品や缶詰をローリングストックしながら、調理不要の非常食や長期保存水も別に確保しておく方法があります。農林水産省でも、日常食品と非常食をバランスよく備えることが大切だとしています。「普段食べるもの」と「もしものために残しておくもの」を組み合わせることで、無理なく備えながら、災害時の選択肢も広げられます。
まとめ|無理なく続けることが、いちばんの備え
ローリングストックは、普段の食品を少し多めに持ち、食べた分を買い足すことで、災害への備えを無理なく続けていく方法です。初心者の方は、まず次のことから始めてみましょう。
- 家にある食品と賞味期限を確認する
- 家族の人数に合わせて必要な量を考える
- 普段食べる食品を少し多めに買う
- 食べた分を補充する習慣をつける
あわせて、停電や断水が起きても食べられるか、家族の好みに合っているかなど、災害時の使いやすさも確認しておきましょう。
始めてみると、「買い足すのを忘れた」「賞味期限を切らしてしまった」ということもあるかもしれません。そんなときは、管理をもっと頑張るのではなく、食品を取り出しやすい場所に置く、食べたらすぐ買い物リストに追加するなど、普段の生活の中で続けられる工夫をしてみましょう。続けるための具体的な工夫は、ローリングストックが続かない? 無理なく続ける7つのコツで詳しく紹介しています。
最初から完璧にそろえる必要はありません。いつもの買い物が、もしもの備えになる。そんな暮らしになじむ防災を、今日から始めてみませんか。
参考資料

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